書評ブログ

日々の読書の記録と書評

2017-01-01から1年間の記事一覧

坑夫(夏目漱石)

許嫁がいるにも関わらず、その妹と恋愛関係に陥りそうになったことに苦に家出した主人公。丸一日歩いていると、ポン引きに儲かる働き口が在ると誘われ、ついて行った先は銅山だった。 銅山の街は都市から隔絶され、独特の習慣や風俗が広がる空間だった*1。ま…

彼岸過迄(夏目漱石)

漱石の言い訳めいた能書きから始まる。大病直後無理を避けて元旦まで執筆をやめていただの、1月から彼岸までに新聞連載を終わらせるつもりだから安直に彼岸過迄というタイトルにしただの。 大学は出たけどプー。誇大な冒険を妄想するばかりで就職活動も飽き…

文鳥(夏目漱石)

漱石が 鈴木三重吉にそそのかされて文鳥を飼った一部始終を描いた短編。 最初はせっせと世話をしながら忙しい執筆活動の癒やしにするのだが、だんだん世話に飽きるというお決まりのパターンがリアル。そして、文鳥の姿の描写がとても細やかで感心する。 やっ…

薤露行(夏目漱石)

(楽天)倫敦塔・幻影の盾※薤露行収録 (Amazon)倫敦塔・幻影の盾※薤露行収録 「かいろこう」と読む。 薤とはらっきょうのことで、薤の葉の上に置いた露は消えやすいところから、人の世のはかないことや、人の死を悲しむ涙を薤露という。転じて、葬送のとき…

夢十夜(夏目漱石)

〈楽天ブックス〉夢十夜 〈楽天kobo〉夢十夜 〈Amazon〉夢十夜 「こんな夢を見た」で始まる短い夢語り10編。日常生活の延長線上にある夢、少し幻想的な夢、さまざま。僭越ながら各編にタイトルをつけるとこんなところ。 第一夜 死んだ女を100年待つ 第二夜 …

三四郎(夏目漱石)

三四郎(楽天ブックス) 三四郎(楽天kobo) 三四郎 (Amazon) 熊本から上京して東大に入学した三四郎が、学問に、交友に、恋愛に、学生生活を謳歌する青春グラフィティ(2/3は恋愛譚だが)。 東大に入学することになった三四郎は、暑い盛りに電車で上京する*…

こころ(夏目漱石)

高校の教科書にも載っている小説。教科書は後半の1/3に当たる「先生」の遺書が中心で、「先生」と「私」の出会いや「私」の家族の話は大半がカットされているのだが。。。

門(夏目漱石)

宗助と御米夫婦は崖の下に建つ小さな借家でひっそりと暮らす。夫婦仲はとてもよいのだが、過去の事件がもとで、親戚付き合いも疎遠がちだった。子宝にも恵まれない。...

道草(夏目漱石)

外国留学から帰ってから大学に勤め、教育に、執筆に多忙な健三。妻とは喧嘩が絶えないばかりか、養父母が金をたかりに来て(養父母が二人がかりでにたかるのではなく、養父と養母がそれぞれたかりに来るのである)、気が休まらない。そうこうしているうちに…

野分(夏目漱石)

裕福で明るく結婚を控えた中野と、シャイで堅物で胸を病む高柳。二人は大学の文学部で同期だった友人である。そして、頑固さゆえに生徒(その中に高柳もいた)や同僚にいじめられて教壇を追われた後、今度は雑誌編集で糊口を凌ぎながら文壇に新たな一ページ…

女系家族(山崎豊子)

代々女系(長女が婿を取って家督を継ぐ)で続いてきた大阪船場の老舗問屋の相続ゴタゴタストーリー。これまで何度もドラマ化されている。 山崎豊子は、初期の大阪船場の商人モノと後期の社会問題や社会現象を題材にしたドロドロ劇が多いのだが、これは両者を…

幻影の盾(夏目漱石)

イングランドの伝説時代を題材に取った、ある騎士の戦いと恋の幻想的な物語。日本人が登場する漱石のメジャーな大作とは雰囲気が異なる。「倫敦塔」に近いか。 見慣れない漢語が多い。辞書を引き引きゆっくり味読しよう。

プログラミングの心理学 25周年記念版(ワインバーグ)

IT

1970年代のIT業界で、プログラマーの心理的な側面とパフォーマンスの関係に焦点を当て、ひいてはあるべきマネジメントの姿を考察した古典。 それから25年たっての(1998年)著者のコメントが章ごとに丁寧に付されている。今でも通用するところが多いと思う。 …

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