書評ブログ

日々の読書の記録と書評

ハゲタカ(真山仁)

 

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ハゲタカ→ハゲタカ2→レッドゾーン→グリード と続くハゲタカシリーズの第一幕。

2000年頃の平成不況にあえいでいた日本で、不良債権や経営が傾いた会社を安く買って短期間でボロ儲けする外資投資銀行は、死肉をむさぼるハゲタカと言われていた。

そのハゲタカファンドの一つを率いる日本人を軸に据え、さまざまな企業の再生に携わる人々を描いている。世論誘導のためマスコミへのリーク合戦も辞さない企業買収ビジネスの熾烈な舞台裏が語られつつも、決して感情的なハゲタカ悪玉論には与していない(金の亡者みたいな投資銀行の人物も出てくるが)。

主人公のビジネスの場における冷徹さと個人としての心の揺れ動きや、それぞれの立場で企業再生に精魂を傾ける人々、そして彼らによって企業が苦境に立ち至った真の原因が白日の下にさらされる様子が面白い。

出てくる企業の名前や設定から、実在のモデルがあるように思われる(三葉銀行→三和銀行など)。

ラストがTo be continued で終わるのが不気味であり、続編を求めたくなった。

吾輩は猫である(夏目漱石)

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 旧制中学の英文教師(『リードル』という)苦沙弥先生の飼い猫の目を通し、西洋文明に染まった当時の中流階級を皮肉を込めて面白おかしく描く。職業といい病歴といい、苦沙弥先生には漱石自身が投影されている。余裕派の面目躍如。

《Amazon》吾輩は猫である(夏目漱石 新潮文庫)
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炎熱商人(深田祐介)

  

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今年亡くなった深田祐介直木賞を受賞した出世作。30年程前にNHKでドラマ化。ラストシーンがかすかに記憶に残っている。

高度成長期の日本で木材需要が急増し、中堅商社がフィリピン、ルソン島のラワン材の新規取引に走る。

人格者の支店長、変わり者の次長、ぼんぼんの出向社員、イケメン現地社員たちが、人々に残る戦争の傷、商習慣の違い、世界経済の荒波に翻弄されながらも、徐々にフィリピン社会に根付いて商売を花開かせる様子に感情移入してしまう。

イケメン現地社員は日比混血で占領下のマニラで日本人学校に通っていた設定であり、随所に織り交ぜられる戦時中の回想も読ませる。

そして、最後に・・・。

商社の採用面接で「炎熱商人を読んだことはあるか?」と聞かれたという都市伝説があるが、まんざら伝説でもないのだろう。

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