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警視庁情報官 シークレット・オフィサー(濱嘉之)

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警視庁の超優秀なノンキャリアの公安マンを主人公に据えた、公安モノの警察小説シリーズの第一弾。

原発利権とそれに群がる政治家・宗教団体などの暗躍、それに対峙する公安警察の活躍が描かれている。秀逸なのは、原発に反対する地主を暴力団を使って追い出すシーン。証拠を残さないために暴力団が選んだアナログな手段に微笑。シノギも楽ではない。 また、公安の基本「転び公妨」による被疑者逮捕のシーンもリアルである。

濱嘉之の経歴を見ると、警視庁の公安マンとして活躍したことが伺える。その頃の実体験や見聞を投影させているのだろう。登場する団体や人物には大抵実在のモデルがある(さすがに、警視庁総務部に情報室という秘匿セクションを作った設定はフィクションだと思うが…)。

公安というと左翼を監視するイメージが強いが、現実はそれだけではない。日頃から社会に多くの協力者を作りつつ、一旦背後関係が複雑な事件の端緒をつかめば、協力者を使って陰に陽に捜査を指揮し、政官財、宗教、反社にかかわらず犯罪者を一網打尽にすることが本来のミッションであることがわかる。

それだけに登場人物・団体、背後関係の説明に多くの紙数が割かれ、ラストでももやもやが残りカタルシスがあまり得られない。利権が絡む事件の場合、多くの端緒情報のうち立件され、報道されるものは一部に過ぎないだろうから、これは捜査の現実を表しているのかもしれない。また、膨大な情報には次作以降の伏線も含まれている。

この巻は、シリーズの導入編として、公安警察を知る資料として、そして実在のモデルを想像しながら読むのが面白いだろう。

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