書評ブログ

日々の読書の記録と書評

ヴェノナ 解読されたソ連の暗号とスパイ活動(ジョン・アール・ヘインズ/中西輝政監訳)

マンハッタン計画アメリカの原爆開発プロジェクト)の参加者にはソ連側に寝返り情報を漏洩した者がいて、ソ連はその情報をもとに短期間で原爆開発に成功した、という歴史は以前からよく知られている。

アメリカは、アメリカ国内のソ連のエージェントから本国への無線通信を傍受し、一部の暗号解読に成功していた。これがヴェノナ作戦で、マンハッタン計画以外にも、多数のアメリカ人がソ連の協力者になり情報を漏洩していたことが判明した。ヴェノナ作戦の成果はソ連崩壊後の1995年まで秘匿されていたが、公開後急速に研究された。

本書では、判明しているソ連協力者の実名を明示しつつ、当時のソ連のスパイ活動の実態を明るみにしている。ソ連第二次世界大戦以前からアメリカ国内にスパイネットワークを構築し、政府内部からマスコミや産業界まで、多数のアメリカ人を協力者としていた。その主要な舞台はアメリ共産党*1だったという。

ソ連に対するイメージがあれば、ソ連ならこれくらいのことはやりそうと思うのではないか。膨大な人と金をつぎ込んでスパイネットワークを構築したソ連と、暗号を解読するまでノーガードでやられっ放しだったアメリカ双方に呆れるやら恐ろしいやら。*2

 〔楽天〕ヴェノナ 解読されたソ連の暗号とスパイ活動

〔Amazon〕ヴェノナ 解読されたソ連の暗号とスパイ活動

 

*1:アメリカって、二大政党制だから共和党民主党しかないんでしょ、と思ったら大間違いで、国政への影響力は小さくとも極右から極左まで多数の政党がある。アメリ共産党は今も存在する。

*2:だから今の中国も、北朝鮮も、ロシアも…、という発想はかえって危険かもしれない。彼らは更に洗練されたやり方をしているだろうから。

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ サイトランク